わたしの体験〜センサリーアウェアネスワークショップ in Cortes 2014
黒田有子
カナダ・コルテス島で2014年6月29日~7月11日に行われたセンサリー アウェアネスのワークショップにひとりの生徒として参加した時の体験について、帰国後個人のブログに投稿した文章です。今までもこのサイト上で公開していましたが、改めて編集し公開しなおしました。
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二週間にわたり、コルテス島の自然に囲まれて、自分の「nature ・ ネイチャー」(あるがままの自分・本質とでも訳しましょうか)を再発見し、それにつながり、取り戻す時間。(写真はワークショップ・リーダーのジュディス・ウィーバー博士のスタジオ。天井を見上げると空が見えます)
私は参加者・生徒の一人として、そして通訳という大切な役目も担いながらその場にいました。
参加者は日本人、カナダ人、アメリカ人、オーストラリア人。約10人前後の小さなグループで中には一週目、二週目のみ参加の人も。
二週間の長きにわたるワークショップの通訳は私にとって初めての経験。渡航前にはうれしさと緊張の入り混じった複雑な気持ちでした。
なにより、自分の中に生まれる感覚とともに居ながら、誰かの発言があったらそれに素早く反応して思考を使うという作業は、慣れない私には大変な仕事のように思えました。
ワークショップが始まって数日経ったある朝のことです。午前中のクラスが始まるときに、その日から新しく参加される人のために自分の名前やどこから来たかに加えて「今、自分のなかに浮かぶものや感覚を言葉にする」という自己紹介をしていました。そして自分の中に浮かぶものに関しては必ずしも言わなければいけないものではありません、とジュディス。
私の番になり、自分のなかに沈みこんでいった時に、どこかが静かに引きつられるような感覚がありました。
そしてそのときに心に浮かんだいろんなことを言葉にする内に、いつのまにか子どものように声をあげて私は泣いていました。
私は傷つきやすい自分をその場でオープンにすることを許されているように感じていました。
そしてそのスペースをホールドして(保って)くれていたジュディスはじめ、その場にいた人たちの温かさに触れ、私はだんだんフンワリと軽くなるのを感じました。
激しく泣いたあとなのに不思議なくらい、その直後からも通訳を続けることができました。
そのままの「私」でいられる心地よい空間がある。なんて幸せなことなんだろう。
そしてこの場所で、どんな「あなた」であれ、そのままの「あなた」を受け入れる。時には難しく感じるかもしれないけど、私の出来る限り・・・静かな二週間を自然の力強いサポートをもらいながら過ごせる贅沢。
この二週間、私のなかにベースとなって流れていく言葉、それが「gratitude 感謝」だと気づく、そんな瞬間でした。
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このワークショップが始まるときジュディスから言われた言葉にこんなことがあります。
『How can we know another until we know ourselves?』
「自分自身のことを理解するまで、私たちはどうやって他の人のことを理解できるでしょうか?」 訳すとこんな感じでしょうか?
センサリー アウェアネスのワークではリーダー(ジュディス)がある一連の「実験・探求」のようなアクティビティーをおこなう事を提案し(提案=suggestionというより招待・誘い=invitationという言葉が使われます)それを十分に体験しながら、自分の感覚に耳を傾けます。
ここだけ読んだら非常に分かりにくいと思いますが、たとえば
「スタジオの中を自由にあるいてみる」
「後ろ向きに歩いてみる」
「目を閉じて歩いてみる」
というようなアクティビティーをやってみて、自分のなかにどんな感覚が生まれるか、それを丁寧に感じていきます。
一連のアクティビティー、実験に取り組んだあとは、自分たちに起きたことをグループ内でシェアする時間をたっぷりととります。
シェアは強制ではありません。
言いたくなった人、準備が出来た人が、言葉を繰り出していきます。感覚を言葉に落とし込むには時間がかかることもあります。そしてある人の言葉が「ああ、私もそうだわ!」という確認になることも。そしてここで語られることにもちろん「正しい・間違っている」「良い・悪い」はありません。
シェアの中に「恐れを感じた」「不安だった」「怒りを感じた」というような言葉が出てきたとき、『それはどういう感覚でしたか?』『身体に感じたものは何?』とジュディスから尋ねられました。
みなさんが「恐れ」「不安」「怒り」を感じるとき、それは身体としてどんな感覚になるでしょうか?
—そんなこと、感じようとしたことない—と戸惑われるかも知れませんね。
私自身、それを聞き返されたとき、しばらく言葉に詰まりました。
「胸のあたりがざわざわする感じ」
「息苦しい感じ」
「とげとげして熱いものが身体の中心にあった」
こんな風に言葉にすると、その人固有の感覚が伝わりやすくなります。
私たちは自分のなかに湧きあがってきたものにすぐ「恐れ」「不安」「怒り」などの手っ取り早いレッテルを貼ります。果たして本当にそれが「怒り」などの感情なのか、十分に検証しないまま。
そういうところを繊細に区別して行く、そんな作業もワークショップでは含まれていました。
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ジュディスのスタジオから階段で降りていったところにビーチがあり、お天気が良くて潮が引いている時にはそこでクラスが行われるときがあります。波打ち際まで行って、水の中にジャブジャブ入ったり、ヒトデや海藻、貝殻に触れてみたり、沢山の石の上をピョンピョンと移動したり、思い思いに海辺を探索する時間にはみんなが「大きな身体を持った子ども」になります。
そうしたとき、またワークの全体を通して、おとなの自分として、自分自身のケアは十分に行う、自分にとって困難に感じることがあればワーク中の提案であっても自分を守る選択をする自由が与えられています。
大きな岩、石や流れ着いている流木。
それらの上に乗ってそれぞれの物体から自分が受ける影響や、バランスなどを感じ取ります。(中にはとても大きな流木も)
あるときジュディスが『では石や岩の上に横たわってみるのはどうですか?』と私たちに提案しました。「え、岩の上に横たわる・・・?!痛いんじゃない?」・・・でも実際に岩の上に身体を横たえてみると、なんだか不思議。すっぽり収まる感じが意外に心地いい・・・。頭のなかで考えることが、どれだけ自分の実際の体験と違うものなのかを、強く感じることができるワークでした。
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そしてワークショップが終わる前の日、スタジオから少し離れたManson’s Lagoonという所で朝のクラスが始まりました。ここは引き潮になると砂浜が広がり、向こうの方には二枚貝を今夜のおかずにするためにバケツを持ってきた人たちも。ここではジュディスのスタジオの下のビーチとManson’s Lagoonのビーチの違い、そして「私たちの違い」を感じます。
コルテス在住のワークショップ参加者さんたちがこの日はお家のワンちゃんを連れてきていました。
リードを離すと、走る、走る、はしる~!!!
水の中、砂浜の上、全速力でワンちゃんたちは走りまわります。足の下にある貝殻の固さ、鋭さに私たちは悪戦苦闘しながら歩いていたのですが、彼らはそんなこと、お構いなしです。「た~のしぃい~!!」「あそぼうよ~!!」を全身で表わすワンちゃんたち。
過去のことに囚われたり、未来のことを心配したりせず「今、この瞬間」をフルに味わっている姿、そしてその柔軟な動き・・・。
彼らは私たちにとってカワイくて偉大な先生でした。
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他にももっとシェアしたい、素敵な瞬間がありました。そして自分のあり方について深く考える機会を与えられた、貴重な経験も。でも私の話はここまでにします。
大きな学びの旅。
思い出を大切にしまって、先に進みましょう。私のカナダでの体験にお付き合いいただきありがとうございました。そして、最後に今回の旅をご一緒できたみなさまに、この場をお借りしてお礼を言わせてください。
そのままのあなたでいてくれて、そして、そのままの私を受け入れてくれて心からありがとう。